もちごめ日記

浅はかで感情の振り幅が大きい人のブログ

烈海王とセンチメンタル

烈海王異世界転生しても一向にかまわんッッ」というバキ外伝を買って読んでいる。
自分が刃牙シリーズの漫画を買う日が来るなんて思いもしなかった。
刃牙はいつでも行ける友達の家に揃っていて、たまに遊びに行った時に未読分をまとめて読み進めるものだった。
自分の家にあるのは別のジャンルの本。
みんなそれぞれ好きな物を揃えていて、それぞれの家でみんなが読む。
自分にとってコミックスとはそういう物だった。


ジャンプもマガジンもチャンピオンも殆ど自分で買った記憶が無い。
それは発売日になれば教室にあるもので、自席にいるだけで順番に回ってくるものだったから。


卒業してしばらくは気付かなかった。
いつだったかコンビニで見かけた漫画雑誌に違和感を覚え、少し考えて気付く。
ああ、もう何年も読んでないな。

連載途中で読まなくなった作品が山程あるのに気にならなかったのは他にもっと気になる事が出来たからか。
初めての一人暮らし、都会の生活、仕事。
地元を離れ、大人になったっぽいという薄っすらした自覚とともに忙しく過ごす日々。
ズボラで筆不精なので教室で毎日顔を合わせた友達の近況は殆ど知らない。
携帯の番号やメールアドレスがコロコロ変わる、そんな時代だった。
LINEのような便利なものも無いし、わざわざメールや電話をするような用事もあまりない。
年に一度、数日間しか地元に帰らないでいたら仲の良かった
自分の前にジャンプを読んでいた奴の連絡先もわからなくなった。

数少ない、付き合いが続いている友達の家にある本と自分で買い揃えている本しか読まなくなった。


その友達ともやがて結婚や転職で疎遠になる。
新しい友達と同じようなことが出来た時期もあるけど、やっぱり同じような理由でいつしか付き合い方が変わっていく。


多分心底漫画が好きで読まずにはいられない程ではなかったんじゃないかと思う。
その作品の面白さ楽しさと、一緒に読んで笑い合える友達、その時間、空間、そういう物をまるっとひとつにまとめて「漫画は楽しい」と感じていたんだろう。


自分の人生にも色々あって、縁もゆかりもない土地で暮らしはじめた。
当然友達は居ないし、馴染みの本屋も行きつけの飲み屋も無い。酒飲まないけど。
わざわざ連絡を入れるような事じゃないし、会った時の挨拶みたいなものだから「新刊読んだ?」と聞いてくる人も聞く相手もいなくなった。


いつしかあまり漫画を買わなくなっていた。
そう気付いたのはつい最近。
烈海王〜」のプロモツイートを見てすぐにKindle版の1巻を買って読んでからだったと思う。


連載開始の告知を見た時にすぐにツイートした。
ワクワクしたから。
一番長く住んだ場所の友達が食いついて来て、久しぶりに誰かと一緒にワクワクする感覚を味わった。


感傷だろうか。
楽しいけれど少し切ないような不思議な感覚。
年寄りかよ、と自分に言って考えるのをやめる。


自分にはまだ時間も自由も体力もあると、やりたければ何だって出来ると、こんなにつまらない奴じゃなかったはずだろ、と強がりの自分が叫び始めた。


まさか漫画一冊で生き方を考えることになるとは思わなかったけど、昔よりも大人になった分は現実と折り合いをつけながら上手くやっていけるんじゃないの?
と叫び始めた自分をなだめながら仕事に向かう。
烈海王への憧れはそっとしまっておいて。